はじめに
こんにちは、スタイリリックのうさまです。
今回は、前回紹介した無骨な「CWU-45/P フライトジャケット」に引き続き、
これからミリタリーを着てみたい人にこそおすすめしたい一枚、
「CWU-36/P フライトジャケット」にフォーカスして解説していきます。
ミリタリーと聞くと、
「難しそう」「ゴツくて着こなせない」
そんな印象を持つ方も多いと思います。
ですがCWU-36/Pは、
実物ミリタリーでありながら、日常に自然と馴染む軽さとバランスを持ったジャケット。
初めての一着としても非常に選びやすいモデルです。
この記事では、
ミリタリー服を長く見てきた視点から、
なぜCWU-36/Pが“最初の一着”としておすすめなのかを、
ディテールやサイズ感も含めて分かりやすく解説していきます。
前回のCWU-45/P フライトジャケットの解説はこちら

購入方法
今回紹介するCWU-36/P フライトジャケットは以下のリンクから購入することができます。
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CWU-36/Pについて(歴史)

一般的に「CWU-36/Pフライトジャケット」として知られるこのジャケットの正式名称は、
“JACKET, FLYER’S, MEN’S, SUMMER, TYPE CWU-36/P”で日本語に訳すと、「パイロット用 夏季型ジャケット CWU-36/Pタイプ」といったところでしょうか。
前回もご紹介しましたが、「CWU」という略称については、しばしば「Cold Weather Uniform(寒冷地用装備)」の略と説明されている例が散見されます(CWU-45/Pの記事ではこちらで紹介しました。)。
しかしこのCWU-36/Pは、正式名称に「SUMMER(夏用)」と明記されていることからもわかるように、寒冷地用ではありません。
そのため、この装備の「CWU」はアメリカ軍における衣類装備の規格名称(Clothing Wear Unit)と捉える方が自然で、実態に即していると言えるのではないでしょうか。
CWU-36/Pの前身にあたるのは、1970年代初頭に登場したCWU-45/Pというジャケットです。これは難燃性のアラミド繊維(ノーメックス)を使用し、中綿を備えた寒冷地向けのフライトジャケットとしてまずアメリカ海軍で採用され、その後空軍にも導入されました。
しかし、CWU-45/Pにはひとつの問題がありました。それは、10℃〜30℃の「ライトゾーン(Light Zone)」と呼ばれる温暖な気候帯での運用に不向きだったという点です。
このライトゾーンでは、それまでL-2Bジャケットが主に使用されていました。L-2Bは軽量で動きやすく、MA-1に似たシルエットを持つナイロン製のジャケットでしたが、ナイロン素材は高温下では燃えやすいという欠点がありました。
つまり現場では、
という矛盾したジレンマが発生していたのです。
この課題を解決するために開発されたのが、中綿を省いた軽量バージョンのCWU-45/P、すなわちCWU-36/Pです。
開発は1976年頃に始まり、1977年〜1978年にかけてアメリカ空軍で正式採用されました。
CWU-36/Pは、CWU-45/Pと同じく難燃素材「ノーメックス(Nomex)」を採用しながらも、中綿を抜くことで軽量化に成功。まさにライトゾーンでの運用に特化した“燃えない夏用ジャケット”として誕生したのです。
現在でもアメリカ空軍および海軍の一部で採用が続いており、その機能性と信頼性の高さがうかがえます。
CWU-36/Pが一躍注目を浴びたきっかけといえば、やはり映画『トップガン マーヴェリック(2022)』でしょう。
劇中でトム・クルーズ演じるマーヴェリックが着用していたジャケットこそ、まさにこのCWU-36/P。クラシックで無骨なデザインに、現代的な機能素材を掛け合わせたこのジャケットは、まさに“本物のフライトジャケット”の象徴ともいえる存在です。
ディテール
それではあのトム・クルーズ(マーヴェリック)が愛した、この最高にかっちょいいジャケットのディテールを詳しく見ていきましょう!
素材

CWU-36/Pに使われている素材はNomex(ノーメックス)と呼ばれる耐熱・難燃繊維です。
これはファッション用途ではなく、火災や高温環境下でパイロットの生存性を高めるために採用されたもの。
写真からも分かる通り、
-
ナイロンのような強い光沢
-
しなやかだがコシのある生地感
-
経年で出てくる独特のシワと退色
といった特徴があります。
また、Nomexは溶けずに炭化する性質を持つため、
MA-1(ナイロン製)と比べて「燃えにくい=安全性が高い」のが最大の違いです。
タグ(年代判別)

CWU-36/Pのタグは、このジャケットがいつ・どんな規格で・誰によって作られたかを示す、いわば身分証明書のような存在です。
表記を一つずつ読み解くことで、個体の背景がほぼ特定できます。
装備名

まず
「JACKET, FLYER’S, MEN’S, SUMMER / TYPE CWU-36/P」
この表記から、本品が
-
フライトクルー用
-
男性用
-
夏季仕様(中綿なし)
の正式装備であることが分かります。
ファッション向けの名称ではなく、用途をそのまま記した軍の公式呼称です。
ミルスペック番号

次に
「MIL-J-83382C」
これはCWU-36/Pに適用される米軍のミルスペック番号。
素材、縫製、耐熱性能まで細かく定められた規格で、
この表記がある=米軍基準を満たした実物であることを意味します。
素材名と供給会社名

素材欄の
「100% ARAMID」
は、Nomex系アラミド繊維を使用している証拠。
下段の注意書きにある通り、
後加工ではなく素材自体が難燃であることが明記されています。
また、供給を担当した会社は、PROPPER INTERNATIONAL社なことも同時に明記されています。
コントラクトナンバー(年代判別)

そして、このタグで最も重要なのが
「SPO100-00-D-4030」 というコントラクト番号。
SPO番号の途中にある
「00」 は契約年度(西暦)を示しており、
この個体が2000年契約で調達された後期ロットであることが分かります。
これらのタグの情報から、
-
1990年代後半〜2000年代初頭製
-
YKKジッパー採用期
-
PROPPER INTERNATIONAL社製
という点まで、タグだけで読み取ることが可能です。
CWU-36/Pのタグは、ブランドや装飾を主張するものではなく、装備としての管理・識別のための情報の集合体。
だからこそ、この無骨な紙タグ一枚が、CWU-36/Pというジャケットの時代・背景・価値をすべて語ってくれるのです。

ジッパー



CWU-36/Pに使われるジッパーは、製造年代によってメーカーが異なります。
-
1970〜80年代製
→ Scovill(スコービル)社製ジッパー
アメリカ軍装備で長く採用されてきた老舗メーカーで、
ヴィンテージCWU-36/Pの象徴的ディテール。 -
1990年代以降
→ YKK製ジッパー
高い品質安定性と供給力から採用が進み、
後期型CWU-36/Pでは主流となります。
このため、
ジップの刻印(SCOVILL / YKK)を見るだけで、大まかな年代判別が可能です。
なお、どちらが優れているという話ではなく、
-
初期型:アメリカ製装備らしさ・ヴィンテージ性
-
後期型:品質の均一性・実用性
という時代背景の違いが表れている点が面白いところ。
CWU-36/Pは、ジッパー一つを取っても「米軍装備の変遷」を読み取れる、非常に資料性の高いフライトジャケットと言えます。
襟



CWU-36/Pの襟は、MA-1などと比べて明らかに小ぶりに設計されています。
これはデザイン上の都合ではなく、フライト時の実用性を最優先した結果。
写真を見ると分かる通り、
-
首元に沿うコンパクトなサイズ感
-
立てても邪魔にならない高さ
-
ヘルメットや酸素マスクと干渉しにくい形状
といった特徴があります。
無骨なミリタリージャケットでありながら、この小さめの襟が全体の印象を柔らかくしているのは、まさに「実用品が偶然生んだデザイン美」だと言えます。
縫製について
縫製仕様はCWU-45/Pとほぼ同一。
中綿の有無による違いはあっても、ステッチの入れ方や補強位置は共通で、36/Pが簡略化されたモデルではないことが分かります。
あくまで用途(季節)が違うだけで、設計思想と作りのレベルは同格です。
ベルクロ

CWU-36/Pに配されたベルクロは、単なる装飾ではなく任務中の情報管理を支えるための装備です。
胸部・肩部に設けられたベルクロは、階級章・ネームテープ・部隊章などを状況に応じて付け替えることを前提としています。
配置を見ていくと、
-
胸部:パイロットの識別用(ネーム/階級)
-
肩部:所属部隊や任務単位を示すパッチ
と役割が明確に分けられており、視認性と作業性が最優先されています。
また、ベルクロ自体も軽量化やコスト削減のためではなく、「即時性」と「柔軟性」を確保するための選択。
縫い付けパッチでは対応できない任務変更や部隊移動にも、
ベルクロであれば即座に対応可能です。
CWU-36/Pのベルクロは、無骨で少し野暮ったく見えるかもしれませんが、それは服がファッションではなく“情報を持つ装備”である証拠。
ポケット


CWU-36/Pのポケットは、裏起毛などの防寒仕様を持たないシンプルな構造。
これは軽量化と可動性を優先した結果で、あくまで春夏用フライトジャケットであることが分かります。
特徴としては、
-
手袋やマップ、装備品が入る大きめサイズ
-
フラップ付きで内容物が落ちにくい設計
-
生地一枚構成で、厚みやモコモコ感が出ない
といった実用本位の仕様。
裏起毛がない分、
✔ 着たときにシルエットが崩れない
✔ 体温調整がしやすい
✔ 街着でも軽快
というメリットも生まれています。
CWU-36/Pのポケットは、「手を温めるため」ではなく“任務に必要なものを収めるため”の収納。
ここにも、服をツールとして設計するアメリカ軍らしい合理性がはっきり表れています。
リブ
裾周り


CWU-36/Pのリブは、防寒のためではなく機体内での安全性と可動性を確保するためのパーツ。
袖口・裾ともに締め付けは強すぎず、身体の動きを妨げないテンションに設定されています。
写真から分かるように、
-
厚みを抑えたリブ幅
-
体に沿って自然にフィットする編み
-
裾のたまりを最小限に抑える形状
といった特徴があります。
特に裾リブは、コックピット内で引っかかりにくく、着座姿勢でもジャケットがめくれ上がらないよう計算された設計。
CWU-36/Pのリブは、暖かさを足すためのものではなく、
「服を身体に固定するための機能部品」。
ここにも、装備としての合理性がはっきり表れています。
腕周り

CWU-36/Pの袖リブは、保温よりも操作性と安全性を優先した設計です。
手首にしっかり収まるテンションで、操縦桿やスイッチ操作の際に袖がずり落ちないように作られています。
写真を見ると、
-
編み目の細かいフラットなリブ
-
厚すぎず、ゴワつかない質感
-
着用時に自然に止まる長さ
といった特徴が分かります。
CWU-36/Pの袖リブは、暖かさよりも確実な操作を支えるためのディテール。
この割り切りが、36/Pの軽快さと日常での着やすさにつながっています。
内側のディテール

CWU-36/Pの内側は、裏地のみのシンプル構造。
中綿やボアは一切なく、軽さと通気性を最優先した設計です。
そのため、
-
着た瞬間の軽さ
-
季節に応じたレイヤードのしやすさ
-
体温がこもりにくい快適さ
が特徴。
内側に余計な装飾や補強を設けていないのも、あくまでフライト時の装備として必要最低限に徹している証拠です。
CWU-36/Pは、「一枚で完結する防寒着」ではなく、
環境に応じて重ね着することを前提にした道具。
この内装が、その思想を最も分かりやすく物語っています。
着画
今回の着画は、一年前に山梨のサントリーの白州工場に向かった時の写真です。
身長162cmのX-Largeサイズ着用ですが、案外イケてます。。。か?

Dieselのズボンのボタンを付けてないのはご愛嬌(閉じてください!)。
サイズ感
CWU-36/Pは、フライトスーツの上から着用することを前提に設計されているため、一般的なアウターより全体的にゆとりのあるサイズ感です。
そのため、身長が目安より低くても「上のサイズ」が問題なく着られるケースも多いのが特徴。
| サイズ | 身長の目安 (cm) |
|---|---|
| Small | 160 ~ 170 |
| Medium | 165 ~ 175 |
| Large | 170 ~ 180 |
| X-Large | 175 ~ 185 |
サイズ選びの考え方
-
ジャストに着たい → 表記通り or 1サイズ下
-
中に着込みたい/雰囲気重視 → 表記通り
-
ゆったり・現代的に着たい → 1サイズ上も十分アリ
CWU-36/Pは丈が比較的短く、
身幅と肩に余裕があるため、
サイズを上げても「着られている感」が出にくいのが強み。
そのため、
「身長は低めだけど、あえて大きめを選ぶ」
という選択が成立する、珍しいミリタリージャケットです!
相場
現在、「CWU-36/P」の相場は3万円~4万円程度。
お店でデットストックで購入するなら5万円前後、メルカリなどの個人売買では3万円以下で購入できることもありますが、状態や取引の安心感が気になるところですよね。
そんな中、大手古着店セカンドストリート(セカスト)なら、品質チェック済みのこれらのアイテムをさらにお得な価格で購入することができます!
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終わりに
CWU-36/Pは、流行や装飾を狙って作られた服ではありません。
それでも今なお魅力的に映るのは、「必要だからそうなった形」だけで構成されているから。
軽く、動きやすく、主張しすぎない。
それでいて確かな背景と思想がある。
CWU-36/Pは、本サイトの実用性とデザインが作り出すライフスタイルを、最も静かに体現しているフライトジャケットです。


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